「……セナノです」
「セナノちゃん」
……小学校以来だ、その呼び方。
なんとなくムズガユイ。
それを隠すようにして、あたしはタピオカジュースのストローを袋から出して、ポイントに挿し込んだ。
ひとくち啜る。
タピオカが勢いよく流れ込んできて、むせそうになったから必死で飲み込んだ。
そうとは知らないトーヤは、いつの間にか飲んでしまったらしいジュースを下から見上げながら言う。
「……セナノちゃん」
「……はい」
トーヤのちょっと真剣な声色に、ここに居た理由を聞かれるのかと少し身構えたあたしに、彼が聞いてきたのは、
「この最後に残るタピオカって、どうやって食べる?」
激しくどうでもいいことだった。
「…………。普通にストローで吸えばいいんじゃないでしょうか」
「でもそれ、絶対全部は食べきれないよね」
「まあ……」
「しかもタピオカ吸い上げたら喉にすっ飛んでくるしね」
「そうですね……」
「そんで勢い良いから鼻から出そうになるよね、タピオカ」
そういう芸人にでもなればいいんじゃないかと思う。
たぶん、きっと売れないけど。


