「まあ、あれだよね。人生どん底みたいな顔してる人が、律儀に財布持ってこんなところで膝抱えてるわけないって、ね?」

「…………」

「ま、財布持っててもお金はいりませんから」

「……お金持ちの方ですか」

「某ファッションセンターのTシャツとジーンズとセールで買った草履履いてる俺がそう見えるって?」

「……なんかすみません」

「いやいや、気にすんな。人間、外見じゃなくて中身が大切なのデス」

「…………」

「で、そんな中身の素敵なお兄さんは、泣くのを我慢している健気な乙女からお金を取ったりしませんからご安心を」


自分で素敵とか言ってる時点で怪しいけど。

ってか、アナタは外見も素敵なんじゃないの。

そりゃ、ハルセもすごくカッコいいけど。

めちゃくちゃ素敵だけど。

でもあたしは、ハルセの素敵な外見が好きになったわけじゃなくて。


……そういえば、あたしがハルセを好きになったきっかけは、なんだったっけ?


「……時におじょーさん」

「……あ、はい」


考えに耽っていたあたしは、見つめていた手の中のタピオカジュースから、トーヤへと視線をよこす。

トーヤは残り少なくなっているタピオカジュースを振って、中のタピオカを眺めながら、


「キミ、名前なんていうの?」


出会ったら一番に言わなければならない最重要事項を尋ねてきた。

トーヤは名乗ってくれたし、あたしも名乗らなきゃいけないんだろう。