「そう、なのかな…」
「まぁ、どんな過去があったにせよ…優陽先輩は菜穂のこと、大好きだと思う」

明美が私の頭を撫でる

「……夏は、菜穂にとって辛い夏だったのよね…私は知ってる……」
「明美………」
「だけど、先輩が前を見てきたなら、今度は菜穂が前を向く番……辛い夏を繰り返したい?」

明美の問いに私は首を横にふる

あんな悲しい気持ち
もう味わいたくない。

先輩の隣にいたい…

「嫌……繰り返したくない」
「それは、先輩も同じでしょ?」
「……っ………うん……」
「今は、先輩を待つしかないけど…大丈夫よ。先輩は離れたりなんてしない」

私は泣きながらうなずく。
そんな私を明美は優しく抱き締めてくれた

歩も優しく笑う



少し落ち着いた菜穂が顔を洗いにいってるとき
歩と明美は微笑み合った

「問題はあの人だけど…ま、あっちには桐さんがいるから、大丈夫だろ」
「……そうね」
「明美もそんな不安な顔すんなよ?」
「わかってるよ………心配してくれてありがと」
「うん」

歩は嬉しそうに笑って、明美の頭を撫でた
明美も、歩を見つめ優しく笑った。