そう、俺に依存し始めてる紀衣の異変に気づいて
わざわざ学校を変えたのは桐だ。

まさか、菜穂ちゃんがいたなんて思ってもなかったけど、もしかしたらそれも桐の狙いだったのかもしれないな。

「……桐には、感謝してる。また、菜穂ちゃんと出会わせてくれた……俺の止まっていた時間を動かしてくれた。……ありがとう」
「優陽………俺、これからはちゃんと、紀衣も優陽も支えていくから。もう逃げたりしない」
「頼りにしてるよ」

俺はそう言ってまた病室に向かうため足を動かしはじめた。

俺はさっきぬぐった菜穂ちゃんの涙の感触を思い出す
菜穂ちゃんはずっと強いと思っていたけど
ほんとは怖くてたまらないんだろう。

また俺がなにも言わず消えるんではないかと…

「ここ、か」

俺はいつの間にかたどりつていた紀衣の病室の前にたつ

そして、もう一度、菜穂ちゃんと握っていた手を見つめる。

「……ちゃんと、帰ってくるよ………菜穂ちゃんの隣に、帰ってくるよ」

そう小さく呟いて病室のドアを開けた。