恋の彗星―僕が彼女と結婚した理由―

円の声を聞いた瞬間、僕は泣きたくなった。

「今日ね、仕事が早く終わったんだ!

これから『張々湖(チャンチャンコ)』って言う中華料理店でご飯食べに行くんだけど、一緒にどう?」

「わかった、すぐ行くよ。

いつものところで待ってればいいんだね?」

「待ってるから早くきてね?」

「ああ、今行くよ」

電話を切ったのと同時に、僕は走り出した。

別に走って待ち合わせ場所に向かわなくても、円はちゃんと待っているのに。

それでも、僕は走った。

円に会いたくて仕方がなかったから。