「すいません、私…」


言葉が上手く続かない。どう言っていいか分からず、それでも黙り込んではいけないと必死に続けた。


「…私、あの、凄く緊張してしまって。色んなこと考えて、…こんなの重いって分かるんですけど、でも上手くできなくて…」


だって、信じられない。こんなに素敵な人が、私が好きな人が、私を好きなんて。付き合いたいって言ってくれて、心がついていかない。


「…この歳にもなって情けないんですけど、あの…」


「分かった」


繋がれていた手を引っ張られ、彼の胸がぐっと近くなる。
そのまま背中に腕がまわされるのを感じ、自分の身体がカッと熱くなるのが分かった。

「っ」


「重くない。一生懸命、考えてくれんの嬉しいし…」


耳元に近い場所に話され、唇をきゅっと噛んだ。
この人は男の人だ。低めの声も、高い背も、繋いだ手も、その匂いも全部が男の人。


「…可愛いな、高橋」


「ぇっと…ぁ…」


「心臓、すっげー早い」


「そ…れは、ごめんなさい」


「謝んなって。可愛いっつってんのに」


エレベーターが開いて、彼の腕が離れていく。
手を引かれて、外に降りた。


世話しなく動くこの胸に、先程から広がる気持ち。甘くて甘くて、私では手に負えない。
それでも心地好くて、できるならずっと浸っていたいと願った。