「おっはよー!ひかりっ!」

自分のクラスに着くと、親友の真田麻衣が元気よくあたしを迎えてくれた。


「おはよっ…!」

「あれ?ひかりなんかテンション低め?」


ドキンっと心臓が高鳴る。
やっぱり、顔に出てる…?しょうがないよね、相当ショックなことだったもん。


「何かあった?何か暗いよ?」

麻衣にそう言われて、あたしは鏡を見つめる。
確かに。まだ朝なのに、顔はげっそりしてしまっている。


「うわーん!麻衣ー!」


あたしは麻衣に思い切り抱きつくと、今までこらえていたのを吐き出すかのように叫んだ。


「ちょ、ひかり!?」


苦笑しながらも、あたしの頭を撫でてくれる麻衣にあたしはゆっくりと今朝のことを話し始めた。



「…キキキキキ、キスぅ!?」


あたしの話を聞いてバカでかい声で叫ぶ麻衣の口をあたしは必死に押さえる。


「声、でかいよ!」

「あ、ごめん。…で、でも!知らない人にキスされたんでしょ!?」

「うん…」

「それってやばくない!?特に大地に!」


あーっ!もう。
何で気にしてるとこをわざわざ出してくるかなぁ!こいつはっ!


「どーせ、大地はあたしがキスされたって聞いてもなんとも思わないもん」

「…まだ言ってないの?」

「…さっき会ったけど…。引かれるのが怖くて言えなかった…」


あたしがしょんぼりしながらそう言うと、麻衣はそっかー…と言いながら改めて席に座りなおした。


「…そのキスしてきた人って、同い年?」

「…すごくかっこよかったし…かなり大人びてたから、年上かな…」

かっこよかったなんて、死んでも認めたくないんだけど…!


「…まだ同じ学生じゃないだけマシだよ。もう会うこともないと思うし」

「…そうだよね。なかったことにしたら、誰も知ることはなくなるもんね!」

「そうだよ!キスはされてない!…それで良いんだって」

妙に安心。やっぱり相談するのって、すごく気が楽になる。相談してよかった。


そして、ちょうどその時。
あたし達の話の終わりを見計らったのか、タイミングよく授業開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。