「…んっ…」

ベッドから起き上がるとはぁはぁと荒い息が静かな俺の部屋に響き渡る。

熱をわざわざ測らなくても直感的に熱だと分かる。
朝から我慢してたけど、さすがに哲にバレたときはもうすごい熱で怒られたから。

部活には出たかったけど、哲が絶対家に帰れ!って言ってしつこかったからしょうがなく家に帰ってきた。


この熱はきっとあの合宿の日、あの雨のせいだと思う。もちろん、それをひかりのせいだと言ってひかりを脅すつもりはないのだけど。

だけど、もしあのまま部活に出ていたら確実に俺はまたこの熱をひかりのせいにして脅してたはずだから。

でも、それを言ったら俺があの日探していたことがバレる。あんな恥ずかしい俺の行為、絶対にひかりにはばれたくない。


だってそんなの、俺がひかりを好きだといってるようなもんだろ?

"好き"?

そんなわけないじゃないか。
俺がそんな気持ちをひかりに抱くわけないんだ。

ただ俺とひかりは彼氏と彼女という肩書きの中に存在してるから、あの時俺は探さなければダメだったんだ。


俺達は、恋人じゃないんだから。





のっそりベッドから立ち上がると、俺はゆっくり冷蔵庫へと向かった。

ガチャっと冷蔵庫を開けると冷蔵庫の冷たい空気が俺を熱く火照った体を冷ます。
水以外何も入っていない冷蔵庫から水を取り出すと、俺は一口、口へと注ぎ込む。


少し落ち着いた、かな。

そして、またベッドへと戻ろうとしたときだった。


"ピンポーン"


玄関のチャイムが鳴った。
珍しい、この家に訪ねてくる人なんていたのか。

なんて思いながらドアをゆっくり開けてみると。



「…玲皇君…」


「…ひ、かり?」


目の前には俺を少し怒りの含んだ瞳で見上げるひかりの姿があった。