「…先輩、何言ってんスか…?」
得意の愛想笑いでその場をごまかそうとするけど、どうやら今は何をしても上手く事は運んでくれなさそうだ。
大地先輩は俺をまっすぐ捕らえて離さない。
形勢逆転かも。
「…お前ら、本当に付き合ってるのかよ」
ボソリと呟く大地先輩。
…ちょっと待てよ。俺、ひかりのこと…泣かしたことねぇよ?
俺の前以外では。
そうだよ、俺いつも二人きりのときにしかひかりの事いじめねぇもん。
それ以外は、あいつ…笑ってるはず。
だって、泣いてたら"大好きな大地"に気付かれちまうもん。
「俺とひかり、いつもラブラブじゃないっすか。先輩の前でも前見せたでしょ?」
俺の中に少し余裕が出来た。
だって、それは本当だから。
大地先輩の前じゃ、いつもラブラブっぽくしてたつもり。
「…泣いてた」
「…え?」
先輩の急な言葉に俺は思わず聞き返した。
「あの日、お前が帰ったあとひかりは泣いてたから…俺が抱きしめた」
なんとも予期できなかった先輩の言葉。
「…抱きしめたって…何してんだよっ…!」
その場にいたわけじゃない。俺が"本当"の彼氏でもない。ひかりを好きなわけでもない。
だけど、ひかりと大地先輩が…抱き合ってる姿を想像しただけで腹が立つ。
怒りのせいで思わず敬語を忘れてしまう。
「…それは、お前だろっ?」
「…え…!?」
「…お前はひかりの彼氏…なんだろ…!?」
「…っ…!」
そう聞かれて、俺はそこで"うん"と肯定して良いはずなのに。
どうしてなんだ。何で、何で口は動いてくれないんだ…。
「何でひかりは泣いてたんだよ…!」
大地先輩に問い詰められる。
そんなの、分かってる。
俺が嫌いなんだ、ひかりは。
だから大地先輩に優しくされてひかりは泣いてしまったに違いない。
…あいつのことだから、きっと…また強がったんだと思う。
俺が全ての問いに答えずにただ押し黙っていると、大地先輩は大きくため息をついた。

