「玲皇、帰ってたのか」
大地先輩も驚いた顔で俺を見る。
そーいや、忘れてた。俺、大地先輩と同じ部屋だったんだっけ。
「先輩こそ、どこ行ってたんスか?」
「ちょっとランニングしてたら雨降ってきて」
「そりゃ、災難でしたね」
俺が冗談っぽくそういうと大地先輩は、ははっと笑うと"ほんとそうだな"と言って床に座った。
今、チャンスなのかもしれない。
ひかりが俺の家に来たあの日。俺が帰ったあの後に何があったのか。
いや、大地先輩がひかりに何をしたのか。
それを聞ける、チャンスなのかもしれない。
ひかりと大地が目を合わせてあれだけ照れてるんだ。
どうせ、キスかヤッたか何かしたんだろ。
じゃなきゃ、あの雰囲気はおかしい。
「大地先輩、ちょっといいですか」
「何だ?」
俺はゆっくりと立ち上がって、大地先輩に悟られないように深呼吸。
…緊張してるのか?、俺。
そういえば、女のことを詮索するのはこれが初めてかもしれない。
今までは、一人の女にこんなに興味を持ったことがなかったから。
「先輩、ひかりに何かしましたよね」
「…は…?」
「二人、明らかすぎますって。言ってください、何をしたのか」
俺がまっすぐに大地先輩を見据えて、真剣に言葉を零す。
大地先輩の瞳はどこか揺らいでいる。
図星か。
「大地先輩?」
先輩は相変わらず押し黙っている。
返事が返ってこないということが、こんなにも苦しいだなんて、今はじめて分かった。
それと同時に、何であの時俺はひかりと大地を二人にして帰ったんだ。
そんな後悔の嵐に襲われる。
…なんだよ、これ。
俺、なんで後悔なんかしてんの?
俺、何でこんなに大地先輩からの答え欲しがってんの?
「…玲皇…こそ」
大地先輩が口を開いた。
その少し前まで自分の世界に入っていたから、俺は少し戸惑いながらその声に耳を向けた。
「…玲皇こそ、…しただろ?」
「…え?」
予期してなかった返答が返ってきて、俺は焦る。
「玲皇こそ、ひかりに何か泣かせること…したんだろ?」
俺の目の前は一瞬で真っ暗になった。