「わー!良い景色っ!」


列車の中から見える景色は、緑がいっぱいですごく気持ち良い。
それに、田舎独特の空気がまたあたしを癒してくれる。

この土日を使ってあたしと麻衣は温泉旅行に来ている。






振り返ること、昨日。



「ひかり!温泉行こう!」

麻衣から勢い良く飛び出したその言葉にあたしは唖然とする。


「温泉…?」

「そう!温泉!」


軽々そういうけど、温泉って分かってるのかな…?

今じゃ、近くに温泉なんてものはないし…、もしかして泊まりとか…?
だけど、それじゃあ学校を休んでしまう事になるんじゃない…?

とあたしの頭の中でいろいろ疑問を浮かべていると、麻衣がそれを悟ったかのようにニコッと笑った。


「…ちょうど土日で温泉旅行できるとこがあるんだよねーっ!」

あたしの目の前で大きくブイサイン。


「そうなの!?」

はじめて聞くその情報にあたしの目はとたんに輝き始める。


「うん!だから行かない!?」

「もちろん!…だけど、急に何で?」


今思えば、特に温泉に行く約束もしてなかったし…何かの打ち上げでもない。
いつもの麻衣の思いつきなのかな…?


「…知ってた?ひかり!」

「え?」

「…ひかり、日に日に顔がヤツれていってるんだよ…?」

あたしの頬を優しく撫でながら、悲しそうにそう呟く麻衣。


「あたしの顔…?」

そういや、最近は忙しすぎて自分の顔を良く見るのも忘れてたかも。


「…温泉でも行ってさ、元気だそ?」

「麻衣…!」


…あたしのため。
そう思うと胸の奥がジーンと熱くなった。


やっぱり、持つべきものは友だよね。
本当に麻衣はあたしの一番の理解者なのかも。







という事で、あたしと麻衣は土日を使って温泉旅行に行く事になったのだ。