「着いたよ」


玲皇君に言われて、あたしはゆっくりと顔を上げる。

小さなオレンジ色のマンション。
ちょうど今の時刻、夕方のあの夕日の色を上手く被ってる。


「早く入れよ。誰もいないから」

「…おじゃまします…」

玲皇君に急かされてそう言いながら部屋に入ると、玲皇君は

"だから、誰もいないって"

そう言って笑った。





部屋は案外綺麗に片付いていた。
男の子の部屋はシンプルだ。


「…親は…仕事?」

「…まぁ、そんなとこ」

玲皇君は、制服をハンガーにかけてベッドに腰掛けた。

そして、棒立ちするあたしに向かって、大きく手を広げた。


「こいよ」

そう笑って。




足がすくんだ。


急にこんな展開って、有りなのかな?
あたしは、誰が好きだったのかな?

思考が全てストップする。

そのせいかな。玲皇君が綺麗に見えるのは。


「緊張してんの?…ひかり、初めて?」

「…うん」

「そっか」


そう言う玲皇君の表情は、すこし嬉しそうだった。


あたしの気分は最悪なのに。




「大地の事忘れられるよ」


玲皇君は、あたしの腕をグイっと引っ張って

ベッドに押し倒した。