「…そっか!何かお前ら変だなって思ってたんだよ!」


ははっと平気な笑顔で笑う大地。やっぱり、平気なんだ。あたしに彼氏が出来たって。
…少しも驚いてはくれないんだね。


「言うの遅くなってすいません」

玲皇君の言葉。なによ、そんな気なかったくせに。ほんとはあたしのことなんか好きでもないくせに。

彼氏と彼女の関係じゃないくせに。


「…ま、仲良くしろよな?」


ポンっと大地に肩を叩かれて、あたしは急に涙が溢れるのを体の奥底に感じた。

だめだ、泣きそう。
大地のあたしをなんとも思っていない、その態度にあたしは予想してた以上のダメージを受けたみたい。


「あ、…うん!」


笑顔、笑顔で返事をするけれど。

それは精一杯の笑顔。
今はこれ以上の笑顔は作れないよ。


「じゃ、俺は退散するわ!お邪魔虫だもんなっ!」

「気、遣わないでくださいよー!」

「いいって!先輩はおとなしく応援してますから」


大地は、そそくさとその場を立ち去っていく。




「…ひかり、泣いてんの?」

「…泣いてない」

「…ほんとに?」

「うん」

あたしの言葉に疑いの目を向け、しゃがんであたしの顔を見た。


「…嘘つき。泣いてるじゃん」

「…!」


だ、誰のせいだと思って…!

あたしは玲皇君に涙を見られた恥ずかしさから、もっていたボールを拭いていたタオルで顔をごしごしと拭く。


「…ブサイク。顔泥だらけ」

「うるさい…!ほっといてよ…!」

「…」



完全にあたしの言葉なんか無視して、あたしの顎を掴んで上を向けさせる玲皇君。
今はその顔を見たくなくて、あたしは必死に顔をそむける。


「…ひかり、失恋祝いに…抱いてやるから。今日家こいよ」


玲皇君のその言葉は、あたし自身を固まらせるのに時間はかからなかった。