「ひっかりー!お昼だよ。食堂行こ!」
昼休みのチャイムと一緒に、あたしと麻衣は教室から食堂へと向かう。
学校にいる間で唯一楽しみなのは、このお昼の時間。
お昼はずっと麻衣と恋や勉強。いろんなことについて飽きるくらい語るんだ。
そして、今日も。
サッカー部のマネージャーをしだしてから、もう数日。
部員はあたしのミスをいつも優しく見逃してくれるし、あたし自身もだいぶミスをしなくなってた。
大地だって、いつもあたしの側にいてくれてサポートしてくれてるし。
すっごく頼りになる。やっぱり大好き。
…玲皇君とは…
あれからあたしは玲皇君の"物"になったのだけれど、その実感は全然ない。
さっそくあたしに飽きてくれたとか…?
それだったら嬉しい。
だって、大地と気軽に話せるようになるんだもん。今はやっぱりどこか後ろめたい…。
「こーら!一人の世界作らないで!」
麻衣はそう言って、あたしの大好きなきつねうどんを差し出す。
「わー!ありがとう!いっただっきまーす!」
「いただきまーす!」
二人で手をそろえて、いただきます。
一番幸せな時間。
「ん!おいひー!」
「ねー!」
二人とも同じリズムでうどんを吸い上げる。
麻衣は軽やかに。あたしはちょっと手こずりながら。
「二人そろってうどん?」
不意に後ろで微かに笑い声が聞こえた。
「だ、大地!」
「うまそうに食うな!」
突然の大地の登場に、あたしの胸はドキドキと高鳴る。
この胸のときめき。大地にだけ。
あたしやっぱり大地が大好きでしょうがないんだよ。
「ど、どうしたの!?」
「あ、いや…。この前の土曜日の試合の日のことだけど…」
どこどなく気まずそうに話す大地。
それもそう。
あたし達はあの日のことはほとんど触れずに今日まできたから。
部活で毎日顔を合わせてるといっても、周りには常に人がいるから話したくても話せない。
それに、玲皇君の視線が一番痛い。
あたしと大地のちょっとした雰囲気のおかしさに気付いたのか、麻衣は"あ、あたしあっちで食べてくるね!"と気を遣ってくれた。