「お、ひかり!」
グランドに着くとそこには、試合の前半が終わったのか椅子に座って休む大地の姿があった。
「だ、大地…」
ホッとあたしは安堵のため息をつく。
大地がいる…。それだけで安心できた。
「どした?元気ねーぞ?」
「…あ、ううん!全然大丈夫!」
「そっか。部室の片付けしてくれてるんだって?ありがとうな」
大地はあたしの頭をその大きな暖かい手で撫でてくれる。
やだな…。今、大地にそんなに優しくされたら…あたし泣いちゃうよ?
でも、今こうして大地と普通に話せるのは玲皇君のことを大地に話していないから。
改めて思い知らされる。
玲皇君さえ、キスのことを言わなければあたしと大地はこのままで居られるんだ。
玲皇君が黙っててくれれば…
あたしの気持ちが大地にばれることもないんだ。
玲皇君の物になれば…。
だんだんとあたしの頭がマヒしてくる。
考えてはいけない方向へと、思考をめぐらせてしまう。
グッと唇をかみ締める。
「ひかり!」
大地に呼ばれて振り返ると、大地は試合が始まるのか用意をし始めていた。
「…なに…?」
「俺も頑張ってくるから、ひかりも元気だせよなっ!」
笑顔でそう言う大地。
あたしも笑顔で返す。大地があたしに背を向けるまで。
大地が試合に出るまで、あたしは涙をこらえる。
そして…ゆっくりとさっきまでいた玲皇君がいる部室へとゆっくり足を進めた。

