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授業終了のチャイムがなり、時刻は12時30分。
昼休みの開始である。緊張している素振りを見せないように、授業道具を片付ける。
先輩が、弁当を作ってくれたのだ。
それは嬉しいことだし、とてもありがたいことなのだが、どこで食べるべきかという問題があった。俺は今まで弁当を持ってきていなくて、従ってクラスの友人とは飯を食わないで保健室で時間潰しをしていたわけで、教室で昼休みを過ごすというのは初の試みってわけだ。
保健室で食うかとも思ったがそれもどうかと思うし、消去法で教室で昼を過ごすと決めたのである。
「あれ、今日はここで食うのか?」
「ああ」
かばんから弁当袋を取り出すのを見た友人が話しかけてきた。
「じゃあ一緒に食おうぜ」
「そういやお前と飯食うのなんて初めてだな」
「初ご飯じゃん!めでたい!しかもちぃの弁当美味そう!」
「美味いよ」
ちぃ、と俺の嫌いな呼び方で呼んでくる割に嫌味なところがないのが好きだ。
「なんだよ自慢かよ! 唐揚げよこせ」
「やらね」
「ケチ!…はっ…!お前、もしやこのおいしそうなお弁当を独り占めするために毎回1人で食ってたのか…? 策士め…」
「相変わらずおもしろいな、」
「俺の唯一の美点だぜ!」
そんな馬鹿みたいな話をしながら食べる弁当はやけに美味しくて、涙がでそうなほどだった。