それから、先輩と一緒に俺が住んでいたアパートに行って俺の私物を取ってきた。きちんと大家さんに挨拶も出来た。


 そこまではよかったのだが。


「絶対嫌です認めません」

「居候のくせに生意気な」

「居候だから自分がそっちで寝るって言ってんでしょ!」


 どちらがベッドで寝るか。そのことで揉めているのだ。

 先輩のベッドなのだから先輩が寝ればいいじゃないか。俺は居候だからソファで寝ると言っているのに、先輩は納得がいかないようだ。


「ほら、お前が寝ろよ。おっきくなれないぞ?」

 いらっ。
 たしかに俺は先輩よりもちっさいけど、それは俺のほうが年下だっていうこともあるし、特別俺がちっさい訳じゃない。


「あーはいはいわかりましたよ! 俺がこっちで寝りゃーいいんでしょ!? 先輩の馬鹿! 明日、体が痛くなって困ればいいんだ!」


 大人気なく先輩に舌を出してみせ、怒りをぶつけるかのようにベッドに飛び込んだ。
 かなり乱暴にしたはずなのにベッドはやわらかく俺を受け止めて、先輩に似てるな、なんて思ってしまって。

 どうすることも出来なくなった思考をごまかそうと、すっぽりと布団を被った。


「おやすみ」


 久しぶりに聞いたそんな言葉に返事をしようかと迷っていたら、電気を消されて。飲み込んだ言葉は、やけに苦く感じた。