「あんたこそ、何して…、っ」
奴は、俺の話を最後まで聞きもしないで走り出した。
もちろん、俺の腕を掴んだまま。
「おまっ…! はなせっ!」
必死に訴えかけるも全て無視して走る。雨で冷えた体に、風が心地よい。
5分ほど走った所、ひとつのマンションが見えてきた。白い壁は完璧すぎて要塞のようにもみえる。
エレベーターもあったのだがそれを使わず、階段を駆け上がる。その間も俺の腕は掴まれたままなので、当然俺も駆け上がる羽目になった。
ちくしょう。
三階の突き当たりの部屋、当たり前のように鍵を開けて、当たり前のように俺を引き込む。
…おいおい、ちょっと待てよ?
まさかここにお前が住んでるとは言わないよな?
そこは高校生の一人暮らしにしては広すぎる空間で、しかし、部屋に明かりがついていなかったということは、やはり一人暮らしなのだろう。
「ちょっと待ってて、それで体拭いて」
パステルブルーのバスタオルを投げ渡され、することも無いので大人しく体を拭く。
「先輩、一人暮らしなんですか」
「そう。こっちきて」
こっちきて、といったくせにまたもや腕を掴む。もはや俺の意志の尊重なんかされていない。
「はい、とりあえず風呂入って。シャワーで申し訳ないけど」
とりあえず風呂入れ、ってどういうことだよ。
そう言おうとした俺を遮るように、奴は戸を閉めやがった。
