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バイトを終え、疲れた体を引き吊り帰路へつく。

 ドアをあけ、ただいま、と心の中で言ってしまう自分に嫌気がさした。
 噎せかえりそうなほどの煙草と、女物の香水の匂い。そこは確かに同じなのに、それ以外は大きく変わってしまっていた。


「…なんだよこれ…」

 いつも、下品なほど胸のでかい女を侍らせ笑っている父の姿がない。
 さらには家電もなくなり、部屋はがらんとしている。廊下には、俺の私服が適当にダンボールに入れて転がしてある。

 いったいどういうことだ。

 呆然としながらも携帯で父に電話をかける。いやに長いコール音は、嫌な想像を膨らませるには充分すぎた。


『――お掛けになった電話番号は――…』


 ぷつり。

 嫌な想像は、現実となってやってきた。