花恋-はなこい-

「もう、本当、

 お兄ちゃんてば

 こういうのに疎いんだから」


深く息を吐きながら

詩織が圭輔を見て言う。


「そりゃそうだろ」


そういう圭輔は

バツが悪そうにしている。


真由は首を傾げながら

兄妹の会話を見守る。


すると詩織が今度は真由の方を向き、

「先輩。これ、買うの

 大変だったんですよ」

と耳打ちするかのような

仕草をしながら、

でもわざと大きな声で言った。


「詩織、言うんじゃねーよ!」


圭輔はそう怒鳴ると、

キッチンの方へと行ってしまった。