花恋-はなこい-

「え、先輩。

 今、何て……?」


聡史の声があまりにも

小さすぎて真由の耳まで

届かない。


不思議そうに見つめる真由に、

聡史はまた柔らかい表情を

見せながら、

「ううん、独り言。

 気にしないで。

 真由ちゃん。圭輔の中で

 “その時”が来るまで、

 しっかりと待っていて欲しい。

 きっと、圭輔の方から

 真由ちゃんに

 声を掛けると思うから」

と言った。


語りかけるような

聡史の言葉に、

真由は微笑んだ。


「はい。その時まで、

 けいくんのこと待っています」