「真由ー。

 一緒にお茶しない?」


リビングの方から、

いつもと変わらない母親の

明るい声が響く。


その声が真由の心を

少しだけ落ち着かせた。


「はーい。今、行くー」


涙をさっと拭いながら

大声でこたえると、

真由は制服から部屋着に着替え、

母親の待つリビングへと

向かった。


テーブルには色んな形の

クッキーが置かれていた。


部屋中に広がる甘い匂いが

真由の鼻をくすぐる。


「クッキー焼いたの?」


真由は自分の席に座りながら

母親に尋ねた。


「うん、そうなのー。

 久し振りに作ったから、

 ちょっと焦げちゃったのも

 あるんだけどね」


照れを隠すように

下を少し出しながら母親が言う。