声をかけたのは、
建志だった。
マグカップにコーヒーを二つ持った彼は、
にっこり笑いながら、話しかける。
「あ。ごめん。電話中?」
「建志。大丈夫。
・・・
じゃ、忙しいので、きりますね」
ピッ
返事を聞かず切った。
「ねぇねぇ。誰?」
「ん?ナンパ男。」
「え?志保がナンパ男に番号教えるなんて珍しいじゃん?」
「・・・ちょっとね。
やだ、建志ったら、なんでそんなにうれしそうなの。」
ニヤリと建志は
楽しそうに笑った。
うーん。建志がそんな顔しているときは、
「面白いことみーつけた」みたいな
建志の持っていたコーヒーを受け取る。
リビングにふんわりコーヒーの香りが充満する。
「で?そいつ、かっこよかったの?」
ニヤニヤと建志は楽しそうだ。
もう、絶対からかうつもりね。
私はあきらめたように、
ふぅっとため息を吐いた。
「ただでさえあきらめの悪いナンパにつかまっちゃったのに、
建志にまでからかわれたら、
私、疲れちゃうわ。」
「やだなぁ。志保。
からかわないよ。
ただ、面白いだけで。」
「もーーっ。」
「じゃ、どんな奴だけかは教えて??」
「うぅーーん。見た目はいいと思う。
でも、迷惑だな。
面倒だし。
しかも、花京院さんだって。」
「へー。御曹司?どっち?
あそこ、三人兄弟じゃなかった?」
「昴って言ってたよ」
建志はふぅーん。といって
自分の部屋に戻る。

