「市川さんってすごいですね。
あの、昴さんを言いくるめるなんて。」
「…あぁ。もう何年も彼の秘書していますから、
コントロールの仕方はある程度心得ています。
ーー田中 志保さんでしたね。
貴方も災難ですね。
昴様に、愛されて。」
その言い方が、あまりにも同情を帯びていたものだから
私はおかしくて声をあげて笑った。
送ってもらいながら、
私は別のことを考えていたーーー。
「あの~。駅まででお願いします。」
「…え?それはダメです。」
「でもーーーー」
「…あぁ。家を知られたくないとか?
大丈夫ですよ。昴様には言いませんし、
押しかけられないようにしますが…?」
ピッとカーナビの電源を落としてくれる。
運転席からちらりと市川さんがこちらを見る。
「---はぁ。」
ため息と相槌が混ざって出てくる。
ーー家を知られたくないというか。
ちょっと複雑というか…
でも、
色々考えていると、不意に車が止まった。
「志保さん?」
心配そうに市川さんが運転席から後部座席の私を覗き込んだ。
「えっとーー。」
仕方ない。
言うしかないかなぁ。

