御曹司なんてお断りっ◆


「市川さんってすごいですね。
 あの、昴さんを言いくるめるなんて。」

「…あぁ。もう何年も彼の秘書していますから、
 コントロールの仕方はある程度心得ています。

 ーー田中 志保さんでしたね。
 貴方も災難ですね。
 昴様に、愛されて。」

その言い方が、あまりにも同情を帯びていたものだから
私はおかしくて声をあげて笑った。

送ってもらいながら、
私は別のことを考えていたーーー。


「あの~。駅まででお願いします。」

「…え?それはダメです。」

「でもーーーー」

「…あぁ。家を知られたくないとか?
 大丈夫ですよ。昴様には言いませんし、
 押しかけられないようにしますが…?」

ピッとカーナビの電源を落としてくれる。
運転席からちらりと市川さんがこちらを見る。


「---はぁ。」

ため息と相槌が混ざって出てくる。

ーー家を知られたくないというか。
ちょっと複雑というか…


でも、



色々考えていると、不意に車が止まった。

「志保さん?」

心配そうに市川さんが運転席から後部座席の私を覗き込んだ。


「えっとーー。」

仕方ない。
言うしかないかなぁ。