御曹司なんてお断りっ◆


「おいっ。武!
 あんまり志保に触るなよっ。」

「きゃ。昴さん。」

急に二人の間に割り込んできたので、志保は驚いて声を上げた。
市川は ふぅ。とため息をついて立ち上がる。
銀色のメガネをきゅっとかけ直してから冷たく昴に言い放つ。


「…昴様。まだ、挨拶の名刺交換が終わってないんじゃ?
 というか、ここに来られると、
 志保さんが休めませんので、
 先ほどの入り口付近まで戻っていただけませんか?」

「だって、武が志保にべたべた障るから…」

「…はぁ。男の嫉妬ほどダサいものはありませんね。
 さっさと、行って仕事をなさってください。」

昴は志保の頭をそっとなでると、しぶしぶ去って行った。
やれやれと市川はソレを見守る。

「ふふふ。やっぱりいいコンビですね?」

「---冗談。
 勘弁してくれよ。あんなガキのどこがいいんだ?志保さん?

 なんだよ、あのクダラナイ嫉妬。
 さっさと仕事を片付けろって話だ。」

「市川さんもまだ、仕事中ですよ?」

「あー、面倒だな。
 志保さんも大変だな。この後紹介されるんだろ?」


私は知っていた。
実は市川さんは、『狼』だと。

優秀な秘書の仮面をつけた実は悪魔。

ーーー昴さんに振り回されてるけど。


「何?なにか面白かった?」

「いえ、市川さん…
 私が昴さんの隣に立ってもいいのかな…?」

それは、もちろん『恋人』として。


そんな私を市川さんはびっくりしたように見つめ返した。