「おいっ。武!
あんまり志保に触るなよっ。」
「きゃ。昴さん。」
急に二人の間に割り込んできたので、志保は驚いて声を上げた。
市川は ふぅ。とため息をついて立ち上がる。
銀色のメガネをきゅっとかけ直してから冷たく昴に言い放つ。
「…昴様。まだ、挨拶の名刺交換が終わってないんじゃ?
というか、ここに来られると、
志保さんが休めませんので、
先ほどの入り口付近まで戻っていただけませんか?」
「だって、武が志保にべたべた障るから…」
「…はぁ。男の嫉妬ほどダサいものはありませんね。
さっさと、行って仕事をなさってください。」
昴は志保の頭をそっとなでると、しぶしぶ去って行った。
やれやれと市川はソレを見守る。
「ふふふ。やっぱりいいコンビですね?」
「---冗談。
勘弁してくれよ。あんなガキのどこがいいんだ?志保さん?
なんだよ、あのクダラナイ嫉妬。
さっさと仕事を片付けろって話だ。」
「市川さんもまだ、仕事中ですよ?」
「あー、面倒だな。
志保さんも大変だな。この後紹介されるんだろ?」
私は知っていた。
実は市川さんは、『狼』だと。
優秀な秘書の仮面をつけた実は悪魔。
ーーー昴さんに振り回されてるけど。
「何?なにか面白かった?」
「いえ、市川さん…
私が昴さんの隣に立ってもいいのかな…?」
それは、もちろん『恋人』として。
そんな私を市川さんはびっくりしたように見つめ返した。

