デジャウ。

昴さんに対する挨拶を見る度に、私はそう思う。

皆同じようなことを、同じ感じで挨拶して、名刺を渡して…
昴さんは私を『大切な人です』と軽く紹介して・・・


何回、同じことを繰り返すのかしら。


実は昴に無理やり連れてこられたパーティは3回目である。
どこかの記念パーティと会社の忘年会パーティと
今回の花京院家のクリスマスパーティ。

ただ、隣にいるだけでいい。
その言葉通り、あまりしゃべらなくてもいいように
昴とその秘書の市川がフォローしてくれる。

今日も、その市川が志保に話しかけようとするお客を
やんわりと制しながら話の流れを変えてくれる。



ーーホント、市川さんって『話し上手』

手際もいいし、仕事も出来るし、気遣いも上手いし。
昴さんが『優秀な秘書』っていうのも
よくわかるわ。

そう思いながら、
志保は、履きなれない靴のヒールをを少しずらした。




「…昴さま。会長も、社長も、お兄様も今から来るようです。
 少し志保さんを、休憩させますね?」

「--あ?ん。わかった。」

「え?」

私、まだ疲れてないけど…

志保が不思議そうな顔で昴の逆隣りにたつ市川を見上げるが
そんなことはお構いなしに、
市川は志保の腕をつかんで引きずる様に奥へと連れて行った。


「あっ。あの…市川さん?」

「…足。」

「え?」

「…志保さん。無理しないで下さい。慣れない靴での立ちっぱなしは
 辛いですよね?」

切れ長の目でじっと見つめられて、
やっぱりこの人は、優秀な秘書だな なんて志保は ふふ っと笑った。