食後のコーヒーが運ばれてくると

「しつれいます。」

柔らかな声が、二人の席に響いた。

「いつもありがとうございます。
 柳瀬川さまーーって・・あれ?」

「こんばんわ。」

志保は、にっこりその声の相手に向かって微笑んだ。

ええっと、確か・・・

「神路さん・・・でしたよね?」

「は…はい。昴のお連れ様のーー志保ちゃんでしたよね?」

二人はかろうじて出てきた名前にふふふと笑いあう。
にこやかに笑いあう二人。

建志は、昴のお連れ様という発言に
若干顔をしかめるが、
愛想笑いを絶やさない。

「へぇ。志保、ここ、例のスバルさんと来たんだ?」

「あ。うん。まぁ・・」

志保は、一緒に食事したことが遠い日のことに思えて、
ライトアップされた中庭に目をそらした。

「志保、神路さんは美月ちゃんのお父さんで
 ここのオーナーシェフなんだ。」

「そうなんです。美月が助けていただいてそれから贔屓にして
 いただいてまして・・・」

「へーーー」

彼女は美月ちゃんっていうんだ…神路さんがお父さんって…

「え?!!」

志保は驚きの声を上げた。