御曹司なんてお断りっ◆


裏口から出たところで
ふと、声がかかる。

「田中さん?」

「あれ?黒田課長・・・」

「残業だったの?お疲れ様。」

「課長は外回りですか?こんな遅くまでお疲れ様です。」

そうなんだよーと言いながら、黒田課長は
にっこりと笑った。
うっすら額ににじむ汗すら爽やかに見えるから
本当に憎めない人だなぁ

と、志保は ふふっと笑顔を返した。

「田中さん、今から帰りなら、一緒に食事にいこう?
 すぐに荷物おいてくるからーー」

「あのっ。いえ・・今日はーー」

志保が、あわてて断ろうとすると

「志保っ!!」

不意に、志保の腕がぐいっと引っ張られる。

きゃっとバランスを崩して、思わず
引っ張られた方によろける。

志保の腕は引っ張られたままだが、
肩をふんわりあたたかい大きな手が包む。


志保は何事かと思って、
あわてて引っ張った、本人を見た。


にっこりと綺麗な笑顔を口元に浮かべた
よく知る男性だった。


「け…建志。」