裏口から出たところで
ふと、声がかかる。
「田中さん?」
「あれ?黒田課長・・・」
「残業だったの?お疲れ様。」
「課長は外回りですか?こんな遅くまでお疲れ様です。」
そうなんだよーと言いながら、黒田課長は
にっこりと笑った。
うっすら額ににじむ汗すら爽やかに見えるから
本当に憎めない人だなぁ
と、志保は ふふっと笑顔を返した。
「田中さん、今から帰りなら、一緒に食事にいこう?
すぐに荷物おいてくるからーー」
「あのっ。いえ・・今日はーー」
志保が、あわてて断ろうとすると
「志保っ!!」
不意に、志保の腕がぐいっと引っ張られる。
きゃっとバランスを崩して、思わず
引っ張られた方によろける。
志保の腕は引っ張られたままだが、
肩をふんわりあたたかい大きな手が包む。
志保は何事かと思って、
あわてて引っ張った、本人を見た。
にっこりと綺麗な笑顔を口元に浮かべた
よく知る男性だった。
「け…建志。」

