黒田課長はすぐに手に袋をさげて戻ってきて
志保の机の隣の席に腰かける。
「はい。そこのコンビニのだけど。」
手渡されたサンドイッチと缶コーヒー。
「あ・・ありがとうございます。」
「いえいえ。
ごめんね。しつこい男で。
彼氏がいるの知ってるけど、まだ諦めきれないから
すこしでもポイントアップしたくて。」
黒田課長は自分の分のコーヒーを開けながら
にこやかに話す。
「---。」
志保は苦笑しながらサンドイッチの封をあける。
黒田課長はまだ、建志を志保の同居している彼氏と信じている。
なんだか否定するのも面倒で、
正直、黒田課長のことまで考えている余裕は志保にはなかった。
「黒田課長・・・あの・・」
「田中さん。大丈夫。俺の自己満足のためにやってるだけだから」
そういって、黒田課長はすっと立ち上がる。
少し困ったように笑って、残りのコーヒーを飲み干す。
「実は、今から営業先に行くところだったんだ。」
じゃあ、またね。と言って
黒田課長は大きめの書類ケースを持ちあげて軽く手を挙げた。
「あ。ありがとうございましたーー」
志保は軽く頭を下げ、あげると黒田課長の後ろ姿が遠くに見えた。
もしかして、私がいたから・・・
わざわざ営業に行くのに…買ってきてくれた・・んだよね?
志保はサンドイッチを一口食べる。
黒田課長のにこやかな笑顔がふと頭によぎって、
かぁっと顔が熱くなる。

