彼女は顔をあげると、
じっと俺の顔をみて、
みるみる眉間にしわを寄せた。
「ナンパ男っ!!!」
「よっ。昨日ぶりだね」
俺はナンパ男という発言に少し傷ついたが
気づかないふりして、にこやかにあいさつした。
・・・うしろでは、
正樹兄ぃが笑をこらえきれず爆笑している。
失礼だな。
「ねぇ。
名前教えてよ。おねーさん。」
これぐらいで挫けていたらダメだろ。
俺は、満面の笑みで微笑みながら
彼女の顔を覗き込むように尋ねる。
「・・・」
押し黙ってしまった彼女を見つめる。
黒縁のメガネの奥は
相変わらず大きくてきれいな黒い瞳が
俺をまるで変態のように見つめている。
うーーん。
ちょっと傷ついた。
俺も黙っていると、正樹兄ぃが助け船を出してくれた。
「昴。お前はうちの常連さんを無くす気か。
どけよ。
困ってるじゃないか。」
やれやれといった感じでカウンターから出てきて、
俺を彼女の前からどかす。

