「俺も敦も、

 自分たちの感情を

 彩加ちゃんに押し付けた。

 本当にごめんね。

 彩加ちゃんを追い詰める

 つもりはなかったんだ。

 でも……」


「でも……?」


優の最後の言葉がひっかかり、

それを繰り返す。


「でも」

一体なんなのだろうか。


一気に心が不安で占拠され、

全身が硬直する。


優は静かに息を吐くと、

視線を私へ合わせてから

言葉を続けた。


「でも、俺は

 彩加ちゃんの気持ちが

 知りたいんだ。

 今の彩加ちゃんの

 心の中には誰がいるのか。

 俺なのか、それとも

 ……敦なのか、それとも

 違う人なのか」