「俺もこの話を訊いたのは、

 ある程度大きくなって

 からなんだ。

 妊娠が分かった当時、

 両親はかなり貧しい

 暮らしをしていたらしい。

 妊娠が純粋に嬉しい反面、

 現実的に子どもを産める

 状態じゃない生活に、

 両親はかなり苦しい

 思いをしたそうだ。

 でも中絶しようにも、

 その費用すら捻出出来ず

 そのまま妊娠は継続されて。

 どんどん膨らむお腹を

 日々感じていた母は、

 『産んで育てる』決心をした。

 でも、そんな時にこの妊娠が

 『双子の妊娠』である

 ことが分かったんだ。

 それでも母は

 『産む』という決意を

 曲げようとしなかった。

 そして、俺たちは産まれた。

 俺が兄で敦が弟だったそうだ。

 産んだ瞬間は幸せと喜びで

 いっぱいだった

 両親だったけれど、

 突きつけられる現実は

 かなり厳しいものだった。

 やはり今の経済状況では

 2人を育てるのは難しい。

 でも、お腹を痛めて

 産んだ子どもは2人とも愛しい。

 両親は悩みに悩んで……、

 俺だけを手元に置き、

 敦を信頼の置ける夫婦に任せた」