そう思っても、もう遅い。


「ベンチに座ってるなんて

 どうしたのかと思って

 声かけたんだ。

 彩加ちゃんはいつも

 1番に教室にいるからさ」


「……」


“優に会うのを避けたかった”


そんなこと、

本人を目の前にして

言えるはずがない。


言葉に詰まって俯いていると、

ふと右手に優しい

温もりを感じた。


ふんわりと柔らかく

握ってくれる優の手。


強引な敦のそれとは違い、

余計私の心を混乱させる。


「行こ、彩加ちゃん」


「ちょっと優くん。

 教室、そっちじゃ……」


歩き始めた優は、

講義のある504教室から

どんどんと離れていく。


歩きながらふと

顔を向けた優は

少しイタズラっ子の笑みを見せて、

「サボっちゃお」

と、ぽつりと言った。