確か今日は母親の仕事は

なかったはず。


連日続いていた残業から

開放され歓喜の声を昨日、

あげていたから。


マンションのエレベータが

5階を示すと

すうっとドアが開く。


誰かが待つ家に帰るのは

久し振りだな。


そんな事を思いながら

廊下を歩く。


家の前に立ち

ドアノブに手をかけると

思いっきり引いた。


「ただいま」


いつもより大きな声を出し、

奥にいるであろう

母親へと呼びかける。


すると向こう側から、

「お帰り、彩加」

と機嫌の良さそうな

母親の弾む声が届いた。


やっぱり、

家族が帰りを待っている

家っていいな。