緋と微熱と狂想曲【上】





「お前に毒牙を刺したのは、ただのマーキングだ」



皐月くんは素っ気無い顔でそう言った。



「マーキング?」



「そう、歯牙から俺の体内分泌液を依茉の身体に流し込んだ」



「そ、それってどうなるの?」



まさかそれが私の中を徘徊して最後には──



悪い想像がまた頭の中を埋め尽くした時、



「依茉が何処へ逃げようとも、必ず見付け出す事が出来る。

俺の分泌液が依茉の中で反応して本体の俺と呼応するから。

それを頼りに探せば依茉なんて見付け出すのは造作も無いって事」



皐月くんはクスッと笑った。



頭を何か重い鈍器でガツンと殴られたかの様な衝撃を受けた。



だから、なの。



私が皐月くんから逃げ切る事は出来無いと知っていたから。



だから、こんなにも余裕だったんだ。