そんな願いも虚しく。
皐月くんは唇をぺろっと舐めた。
「依茉、知ってた?」
「な、何を?」
私はごくりと唾を呑んで皐月くんの動きに目を見張る。
「依茉の身体は凄く甘い匂いがするんだよ。
とても美味しそうな、ね」
匂い…
私から!?
私は急いで自分の腕に鼻を近付けて匂いをかいでみる。
香水なんて付けないし、私から甘い匂いなんてする筈無いのに──
するとそんな私を見た皐月くんは笑い出した。
「はは、依茉バカじゃないの?
人間が人間の匂いかいで甘いなんて感じる訳無いだろ?
俺が吸血鬼でお前がその餌である人間だから甘い香りがするんだよ。
食べ物だってそうだろ。
例えば依茉、綿菓子の近くに佇むと甘い匂いが鼻を掠めるだろ?」
