緋と微熱と狂想曲【上】






ドクン、ドクン…



次第に早く、大きくなっていく私の心臓の鼓動。



額にはうっすらと脂汗が浮かんでいた。



この状況に戸惑う私に皐月くんは何も言わない。



ただ、ずっと私の事を見つめている。



吸い込まれそうな位の黒い瞳で。



その目を見ている内に次第に背筋がゾクゾクしてきた。



目眩を感じる位に、気分が悪い。



何だろう、この感じ…



店に入る前に感じた視線と同じだ。



あれはやっぱり、皐月くんの視線だったの?



「皐月くん…

店に入る前、私の事見てたでしょ?」



渇いた口を開いて、恐る恐る問い掛ける。



「危なっかしいから見てたって言ったよね」



皐月くんはそう言って笑った。



だけど、明らかに先程までの笑い方とは違う。



私はそれを感じ取っていた。