緋と微熱と狂想曲【上】






路地裏に入ると、其処は真っ暗だった。



さっき、カラオケに入る前に来た時の雰囲気とは大違いだ。



皐月くんは足を止めて、私の方を振り返った。



綺麗な漆黒の瞳が街頭の光に反射して私の目に映し出される。



そうだ、私はあの時思ったんだ。



喫茶店の中で、言おうとした言葉が頭の中に甦る。



だけど、それを口にして良いのか私は今でも躊躇ってしまう。



皐月くん、良い事って──



「条件、って何?」



私は真っ直ぐに皐月くんを見つめながら問い掛ける。



「条件は──」



皐月くんも真っ直ぐに私を見つめる。



瞳が重なった時、私の心臓はドクンと震えた。



最初は緊張からきたものだと思った。



だけどそれは、次第に激しくなる。