路地裏に入ると、其処は真っ暗だった。
さっき、カラオケに入る前に来た時の雰囲気とは大違いだ。
皐月くんは足を止めて、私の方を振り返った。
綺麗な漆黒の瞳が街頭の光に反射して私の目に映し出される。
そうだ、私はあの時思ったんだ。
喫茶店の中で、言おうとした言葉が頭の中に甦る。
だけど、それを口にして良いのか私は今でも躊躇ってしまう。
皐月くん、良い事って──
「条件、って何?」
私は真っ直ぐに皐月くんを見つめながら問い掛ける。
「条件は──」
皐月くんも真っ直ぐに私を見つめる。
瞳が重なった時、私の心臓はドクンと震えた。
最初は緊張からきたものだと思った。
だけどそれは、次第に激しくなる。
