『有り難う御座いましたー』



店員さんが私達の後ろでお辞儀をしているのが振り返らなくても分かる。



目の前の自動ドアが左右に開いて、私と皐月くんはカラオケ キューブを後にした。



結局また奢って貰っちゃった、や。

自分の不甲斐無さにがっくりと項垂れる。


そりゃそうだよね。
だって私、財布からお金を取り出すの遅過ぎだもん。本当とろいの嫌だなあ。



取り出し掛けたお金を成す術も無く、また財布の中に戻すしか無かった私の姿は情けないったらありゃしなかった。



お店の中の冷房が効き過ぎていたせいか、外の空気は生暖かく心地良い。



「すっかり遅くなっちゃったね」



街頭の電飾が灯り、暗い空を見上げる。



「送ってくよ」



皐月くんはにこやかに笑った。



「ダメ、ダメ、ダメッ!」



私は思い切り首を横に振る。