緋と微熱と狂想曲【上】





夢の様な心地の中、やけにリアルに聞こえるのは


ズズ、ズズズズッ…


皐月くんの血を吸う音。



…目眩がする。


この音を聞くと、じわじわと体中の力が抜けていく。


駄目、もう吸わないで。


抵抗しなきゃいけないのに。


脳に響くのは部屋に掛かる時計の秒針と血を吸う彼の不協和音。



っ、



今にも意識を飛ばしてしまいそうな最中、虚ろな目で確認したのは

血で汚れていくチュニックと、皐月くんの口元。



「や、」


喉から絞り出す様にして出した小さい声は彼に届く事は無い。


ズズ、ズズッ、


夢中なのだ、私では無く、




――私の血に。



朦朧とする意識の中、初めて狂気を目の当たりにした気がした――。