その音に、はっとした表情を見せた皐月くんは我にでも返ったのだろうか。
血で染まった手で前髪をくしゃりと掻き上げた。
「…悪い、ちょっと俺どうかしてた。
今の、忘れて」
「……?」
“服を着替えて来る。
この女の事は後はマスターに任せるから”
呟く様にそれだけ言うと皐月くんはのろのろと此方に歩いて来た。
何か話さなきゃ、何か言わなきゃ。
そう思っても頭にはお粗末な単語ばかりが並んで、到底口に出来る程のものでは無かった。
結局、扉を通る皐月くんとすれ違っても
私は其処に立ち尽くす事しか出来無いでいた。
目の前には赤に染まった横たわる女の人、
脳裏には血に塗れた皐月くんの姿だけが焼き付いていた――。
