緋と微熱と狂想曲【上】





何より、怖いのは、皐月くんだ。


嘆願の声を非情にも無視し、ひたすら首筋に被り付いて貪欲に血を啜るその姿は、


もう目の前の獲物しか、餌しか見えていなくて。


“獣”そのもの。


いや、違う人種と例えるべきか。

それとも人と違う生き物に例えるべきなのか判断は出来無い。


だけど、私の時とは違うその“貪る様な啜り方”に

獲物を射る様な爛々と輝く“紅い眼”に


“餌”に対する気遣い一つ見られないその態度に。


どうしようも無く恐怖した。




『あ、あ…!』


泣き喚きながらも僅かな抵抗を見せていた、女の人の顔が次に強張った時。


皐月くんのシャツを掴んでいた白い手が力無くぱたりと離されて
だらりと下に垂れた時、


恐怖を感じずにはいられ無かった。