緋と微熱と狂想曲【上】





「…接待有り難う御座いました。

私、皐月くんに一言告げて帰らせて戴きます」



席を立つ私。


“オレンジジュース御馳走様でした”


お礼をの言葉を付け加えてすたすたと歩き出す。



「ちょっと待つんだ、依茉ちゃん!」



突拍子無い私の行動に焦りを感じたのか苑朶さんも席を立った。



私はぷいっ、とそっぽを向いて皐月くんが接待しているカウンターの方に向かう。



何よ、今更さっきまでの無礼講を詫びられたって…

心の中じゃ許さないんだからね!



心の中で苑朶さんに悪態を吐きながらカウンター前まで来ると。



「…あ、れ?」



其処には先程までいた皐月くんの姿は無かった。



代わりに他のバーテンダーさんがいて、カウンター越しに席に座るお客さんにお酒を提供している。