緋と微熱と狂想曲【上】





「貴方は…?」



私は目の前に立つ男の人に、どぎまぎしながら言葉を紡ぐ。



男の人はそれには答えずに凛とした口調で私に言った。



「たまたま見掛けたんですけどさっきから貴方、店の前で青ざめてたじゃないですか。

それなのにいきなり、ふらふらと人混みの中に入ろうとするから。

危なっかしくて見ていられなくなって声を掛けたんです」



「…そう、なの」



それじゃあさっき感じた視線はこの人のもの?



ううん、違う。
だってこの人今言ったじゃない。



“さっきから貴方、店の前で青ざめてたじゃないですか”って。



って言う事は私が何かからの視線に感付いて気分が悪くなってから
私を見ていてくれたって事になるんだよね?