緋と微熱と狂想曲【上】






そう思った私はカラオケ キューブの前からくるりと踵を返し、
目の前の人混みの中に入り混じって此処から立ち去ろうとした。



家に帰ろうとした。



その時だった。



『ねぇ、君』



後ろからぽんっ、と肩を叩かれて。



「きゃああああっ!!」



さっきから身体中の神経が張り詰めていた私は驚いて大声を上げてしまった。



その声にびっくりした通行人の人達が一斉に私の方を見る。



一度に沢山の視線が私に向けられるのを感じながら恐る恐る後ろを振り返った。



そこには。



「大丈夫?」



申し訳無さそうな顔をして私を見る一人の男の人の姿があった。