緋と微熱と狂想曲【上】





「…おじさんの名前は何て言うんですか?」



「私かい?
聞いても得しないよ」



いや、それは今の私の名前を聞いた事も同じに取れると思うんですが。



「得しなくても良いので。
是非、教えてください」



「うーん、こりゃ参ったな。
本当に得しないんだが。

…鍋島大輔(ナベシマダイスケ)って言う名前だ」



おじさんは前置きをしながらもしっかりと名前を教えてくれた。



「鍋島、さん…?」



「そう、鍋島」



変わった名字だからかな、覚え易い。
もう頭の中にインプットされてしまった。



「もう名前、覚えてしまいました」



ニヤッと笑って鍋島さんを見上げると。



「私も依茉ちゃんの名前、もう覚えてしまったよ」



鍋島さんもニヤッと笑い返してくれた。