緋と微熱と狂想曲【上】






…何だったんだろ、今の感じ。



私は少し背中にゾクゾクするものを感じながら視線を動かした。



私は今、カラオケ キューブの店の前にいる。



冷静にその事を頭の中で踏まえながらドクドクと高鳴る胸の前で両手を握り合わせた。



私はこの土地に来てまだそんなに経っていないし、知り合いも少ない。



だから誰かに“視線を感じる”なんて、
“見られている”だなんて思うのは自意識過剰なのかも知れない。



だけど、それでも今は痛い位に視線を感じる。



何処かから誰かが、私をじっと見ている。



そんな気がしてならなかった。



動悸がして、額にはうっすらと脂汗が滲む。
何だか気分が悪い。



和夏も来ないし、彼氏の代役も見付からない。



何にせよ、このまま此処にいたく無い──。