全部無かった事になる。
自分の身に起きていた事を何も知らずに、それからを生きて行く。
皆は知ってる、私だけが知らない空白の時間が出来る。
それが嫌で堪らない。
どうしようも無く、怖い。
知らずに済む“楽さ”知らずに味わう“怖さ”が兼ね備えられている。
もし私にその時が来たら──
その時は──
皐月くんの背中を見つめ、自分の中の答えを想った──。
それから走る事約10分、私は大学の校門前でバイクを降ろされた。
「此処のキャンパスで合ってる?」
「うん、合ってるよ」
私はヘルメットを頭から外すと皐月くんに返した。
