緋と微熱と狂想曲【上】





全部無かった事になる。



自分の身に起きていた事を何も知らずに、それからを生きて行く。



皆は知ってる、私だけが知らない空白の時間が出来る。



それが嫌で堪らない。



どうしようも無く、怖い。



知らずに済む“楽さ”知らずに味わう“怖さ”が兼ね備えられている。



もし私にその時が来たら──



その時は──



皐月くんの背中を見つめ、自分の中の答えを想った──。













それから走る事約10分、私は大学の校門前でバイクを降ろされた。



「此処のキャンパスで合ってる?」



「うん、合ってるよ」



私はヘルメットを頭から外すと皐月くんに返した。