高校の入学式を無事終了した私[菅野沙姫(カンノサキ)]は、明日からの高校生活にワクワクしながら家路についていた。

「おい。」

今、何となく聞き覚えのある声がしたような気がして立ち止まった。辺りは、石垣があるだけで人は誰もいないはずなのに…。
すると、フッと顔に上からの影が重なったと思ったら見覚えがある男が地面に着地していた。

「呼ばれたら何か言えよ。沙姫。」

男は、着地した姿勢て下から私を見た。

「私に言ったんじゃないと思ったんよ。でも、立ち止まって、反応はしたじゃん。」

いきなり現れて、いきなり暴言を吐いたこの男は、
[沫島直(アワジマナオ)]。

「ボケーっとしてっと転ぶぞ。」

「私が、そんなどんくさい人に見えるの?。」

「かなり。」

ガーン。ボケーっとしてた覚えはないぞ。

「それより。俺に付き合え。」

「んげぇ…。」

「………。」

露骨に、嫌だと言う気持ちが表情や声が表現した。
これで、かなり嫌だと言うことが伝わったであろう。
「………。」

「……………。」

無言のガン見の圧力。
直は、腕組みしながら私に圧力をかけてくる。

「……分かったよ。」

「うっしゃー。」

子供のような無邪気な笑顔に不覚にもキュンとしてしまった。

「で。何処に行くの?」

「着いたら分かる。」

「そりゃそうだけど。」

「じゃあ行くぞ。」

「はいはい。わっ。」

いきなり、直が私の右手を掴んで走り出した。腕を掴んでいた直の手は、いつの間にか手を握っていた。手なんか繋がなくても、大丈夫なのに。でも振りほどくのは凄く勿体ない…。気がする。何だろう。この感じ。私、もの凄く意識してるってことなのかな?直のこと。そんな私をよそに直はチラッとだけ私を見て、口元をにやけさせながら走り続けた。

「むかつく。」

そう独り言を吐いた。もちろん直には聞こえないように。