清水くんが突然何を言い出したのかわからず戸惑った。わかるのは、おそらく彼がその女の子を好きなんだろうということ……。
「いろんな女の子と付き合ったりしたけど、俺、泣かれると冷めちゃってダメなんだよね。でも、その人の涙は特別だったな。全然知らない他人のために泣いててさ」
ますますわけがわからない。何故そんな話を私にするの?
「まだわかんない?」
清水くんが私の怪訝な表情を見て少し微笑んで言った。
「全然」
「高橋さん、中学生のとき、お姉さんのピアノの発表会を見に来たでしょ?」
少し考えて頷いた。姉の発表会はもれなく見に行っている。でも、それが?
「俺もね、見に行ったことがあるんだ。あるとき小さな男の子が演奏途中でつまづいて泣き出しちゃって、一度ステージの袖に逃げちゃったんだ」
――……そういえばそんな場面を見たことがあったような……
私はかすかな記憶を一生懸命手繰り寄せた。
「でも先生に励まされたんだろうね。もう一度出てきて、最初から今度は間違えずに弾き終えたんだ」
そうだ。その子、演奏が終わるとお辞儀もしないで一目散にステージから去ったんだ。
「それを見ていた、俺の斜め前に座ってた女の子が泣いてて、びっくりしたんだ。最初はその男の子の身内なのかと思ったけど、話し声を聞いていると違ったんだよね。それで……」
そう言って清水くんがにっこりと笑顔を見せた。そして私のほうへ手を伸ばす。
――な、な、何すんの!?
清水くんの両手が私の眼鏡をつかんで無造作にはずした。
「ちょっ……と!」
「その人が涙を拭くのに眼鏡を取ったんだ」
――……え?
――それ、もしかして……
「どう? 思い出した?」
――嘘!?
私は呆然と清水くんを見ていた。
「いろんな女の子と付き合ったりしたけど、俺、泣かれると冷めちゃってダメなんだよね。でも、その人の涙は特別だったな。全然知らない他人のために泣いててさ」
ますますわけがわからない。何故そんな話を私にするの?
「まだわかんない?」
清水くんが私の怪訝な表情を見て少し微笑んで言った。
「全然」
「高橋さん、中学生のとき、お姉さんのピアノの発表会を見に来たでしょ?」
少し考えて頷いた。姉の発表会はもれなく見に行っている。でも、それが?
「俺もね、見に行ったことがあるんだ。あるとき小さな男の子が演奏途中でつまづいて泣き出しちゃって、一度ステージの袖に逃げちゃったんだ」
――……そういえばそんな場面を見たことがあったような……
私はかすかな記憶を一生懸命手繰り寄せた。
「でも先生に励まされたんだろうね。もう一度出てきて、最初から今度は間違えずに弾き終えたんだ」
そうだ。その子、演奏が終わるとお辞儀もしないで一目散にステージから去ったんだ。
「それを見ていた、俺の斜め前に座ってた女の子が泣いてて、びっくりしたんだ。最初はその男の子の身内なのかと思ったけど、話し声を聞いていると違ったんだよね。それで……」
そう言って清水くんがにっこりと笑顔を見せた。そして私のほうへ手を伸ばす。
――な、な、何すんの!?
清水くんの両手が私の眼鏡をつかんで無造作にはずした。
「ちょっ……と!」
「その人が涙を拭くのに眼鏡を取ったんだ」
――……え?
――それ、もしかして……
「どう? 思い出した?」
――嘘!?
私は呆然と清水くんを見ていた。



